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2章 RAC構成概要
本章ではRAC構成について確認していきたいと思います。
RACを理解する上でこの内容はとても重要なのでしっかりおさえていきたいですね。



RACデータベース構成


RACデータベースの構成ファイルは基本的には
通常のシングルデータベースと変わりありません。

ただ、RAC構成の場合は各ノードごとにトランザクションが実行される為、
UNDO表領域とREDOログは各インスタンスごとに存在します。
そしてRAC構成特有のファイルは投票ディスクとOCRファイルです。
これらのファイルの役割は前章でご紹介しました。


RAC構成のデータベース

Oracleデータベース構成ファイル
・データファイル
・制御ファイル
・REDOログファイル
・アーカイブログファイル

各サーバのインスタンス上でSQLが実行される為、
REDOログファイルとUNDO表領域は各インスタンスごとに存在します。

RAC特有のファイル
・投票ディスク
・OCR(Oracle Clusterware Registry)

上記ファイルはすべて共有ディスクに格納する必要があります。

RACのハード構成


RACのハード構成ですが、サーバは最低2台、共有ディスクが必須となります。
今更ですがサーバのことをノードと呼びます。

RACのハード構成

ディスク要件



RAC環境では共有ディスクが必須です。サポートされているのは
ネットワーク・ファイル・システム(NFS)、
iSCSI、Direct Attached Storage (DAS)、
Storage Area Network(SAN)ストレージおよび
Network Attached Storage (NAS)をサポートしています。

共有ディスクとサーバの経路はストレージパスと呼ばれ、
ストレージパスはCSSが投票ディスクの書き込み処理により
障害が発生していないかを監視しています。

またRACの記憶域オプションですが、以下の構成がサポートされています。

・Oracle ASM(Oracle Automatic Storage Management)
・認定されたクラスタ・ファイル・システム
- Oracle Automatic Storage Management Cluster File System (Oracle ACFS)
- Oracle RAC用に認定されているサード・パーティのクラスタ・ファイル・システム
・認定されたNFS


RACはデータを共有して使用する構成である為、クラスタ対応のファイルシステムである必要があります。
その為、Linux標準のext4やWindowsのFTNSなどのファイルシステムは対応していません。

サードベンダー製のクラスタファイルシステムを使用することも可能ですが、
RACではOracle ASMを使用するのが一般的です。ASMとはOracleが提供する
論理ボリュームマネージャとクラスタファイルシステムの機能をもつファイルシステムです。

ASMの詳細に関しては後ほどご紹介いたします。



ネットワーク要件


また最低2つのネットワークが必要となります。

・パブリックネットワーク
・プライベート・インターコネクト・ネットワーク

パブリックネットワークはアプリケーションサーバと通信する為のネットワークです。
このネットワークを使用してSQLのやり取りを実施します。
パブリックネットワークはCRSがネットワークリソースとして監視しています。

プライベート・インターコネクト・ネットワークはCSSのハートビートを
実施するネットワークおよびキャッシュフュージョンを行うためのネットワークです。

キャッシュフュージョンは後ほどご紹介します。

RACのハード構成としては上記となります。
またその他の要件としてはVIPの構成が必須となります。


仮想IPアドレス(VIP)


Oracleのクラスタウェアをインストールすると仮想IPアドレス(VIP)が
自動的に割当てられます。

通常1つのネットワークに対して割当てるIP(物理IP)は1つだけですが、
VIPを使用することでさらに他のIPを持つことが出来ます。

さらに物理IPはフェイルオーバーすることはできませんが、
VIPはサーバ障害時、フェイルオーバーすることができます。

RACの物理IP接続

上記のように、物理IPで接続してしまうとサーバ障害時に通信が出来なくなり、
その結果、TCP/IPのタイムアウトまで待機してしまいます。

しかし、VIPで接続すれば以下のような流れで、サーバ障害時もクライアントに
即座にエラーを返し、別のノードに再接続させることが可能です。

RACのVIP接続

 @ ノード1でサーバ障害発生、VIP1がノード2に自動フェイルオーバーする
 A クライアントはVIP1がノード2にフェイルオーバーするとノード2に対し通信を行い、
   セッションエラーを受信する
 B クライアントはVIP2を使用し再接続する

VIP1はフェイルオーバー先でそのまま接続を継続できるわけではありません。
一度エラーを返し、再度ノード2のVIPに再接続します。

一度はエラーになりますが、TCP/IPのタイムアウトを待つ必要がなくなるため
クライアントもすぐにエラーを検知することができます。

その為、クライアントは接続に物理IPではなくVIPを使用します。


SCAN(Sigle Client Access Name)


SCANはRAC環境特有の機能であり、クライアントが接続する際に
同一のホスト名で接続させることが出来る機能です。

先ほどVIPの機能についてご紹介しましたが、ノード1のサーバ障害時に
ノード2のVIPに切り替えて再接続する必要があります。

この再接続する為のIPの変更はクライアントの機能で実施する必要があります。
ただしSCANを使用することですべて同じホスト名で再接続まで可能になります。

RACのSCAN接続
SCANは11gR2からの新機能です。SCANの機能を使用するとSCAN用のリスナー、
SCAN用のVIPが自動的に構成されます。

SCANは便利な機能ではありますが、不要であれば停止することも可能です。
もし停止を検討するのであれば一度Oracleサポートに確認することをお勧め致します。

また簡単ではありますがその他の要件です。

詳細はインストレーションガイドのマニュアルを参照してください。

ランレベル: 3または5
ディスプレイ:OUI使用時の為に1024 X 768以上の解像度
メモリ:8GB以上
OS:
  Oracle Linux 7
  Oracle Linux 6.4以上
  Red Hat Enterprise Linux 7
  Red Hat Enterprise Linux 6.4以上
  SUSE Linux Enterprise Server 12 SP1
  
一時ディスク:
  メモリが4GBから16GBの場合: RAMと同じ
  メモリが16GBを超える場合: 16GB

インストール領域:
  Oracle Grid Infrastructureホーム(Gridホーム)に12GB以上の領域
  Oracleベース用に3.5GB以上の領域
  Oracle Databaseに7.5GB以上の領域

12.1ではメモリは4GB以上が推奨でしたが、
12.2以降は8GBのメモリ領域が必要となります。
検証のため、仮想マシンで構築するのもかなり辛い要件となってきていますね。。

RAC構成概要は以上となります。次章はRACアーキテクチャについて学んでいきます。